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【永久保存版】リスティング広告・手動入札の教科書

1.はじめに

Google広告において、広告を有利な形でユーザーに表示するためには、同じ掲載枠に広告を掲載したい他社と比べて優れた広告を配信する必要があります。

この掲載順位は「広告の品質」と「入札」の2つの要素で決まりますが、その中でも「入札」の要素は奥が深く様々な工夫を凝らすことで、他社よりも優位に立つことができます。入札において他社に勝つための施策のことを入札戦略と呼びます。

入札戦略には、手動で入札単価を調節する「手動入札」と、Googleの学習機能で得たデータを使って自動で入札を実行する「自動入札」の2種類があります。

「自動入札」では、クリック・コンバージョン・インプレッションシェアなど、重視する指標に合わせて様々な戦略を選択することができるようになっています。

一方で「手動入札」は文字通り機械学習に頼らず人間の手で管理運用を行う方法のことです。Google社が自動入札を推奨していることからも、現在の主流は自動入札になっています。

しかし、多くの企業が自動入札に頼っている今だからからこそ、機械学習に頼らない運用を採用することで、他社との差別化を図ることができます。

今回は手動入札のメリットや活用事例、具体的にどのように調整を行っていったら良いのか、というポイントについて解説します。

2.入札戦略の種類について

執筆時点(2022年5月現在)でGoogle広告において選択することができる入札戦略の種類は、検索広告では8種類、ディスプレイ広告では7種類となっています。

検索広告で選択することができる入札戦略は以下の通りです。

■手動入札■
「個別クリック単価」「拡張クリック単価」
■自動入札■
「目標コンバージョン単価」「クリック数の最大化」「コンバージョン数の最大化」
「コンバージョン値を最大化」「目標広告費用対効果」「目標インプレッションシェア」

自動入札と手動入札のどちらが良いのか?という問の答えとしては、時と場合によって採用するべき戦略が異なる、ということになります。

自動入札については以下のブログをご覧ください。

【完全版】Google広告の入札戦略とは。特徴と活用方法をわかりやすく解説!

手動入札は「個別クリック単価」と「拡張クリック単価」の2つに分かれています。

《個別クリック単価》
広告のクリック1回に対して支払い可能な上限額(上限クリック単価)を自身で設定し、入札を完全に手動で管理する入札戦略です。

《拡張クリック単価》
基本的には個別クリック単価と同じくキーワードごとにクリック単価を設定しますが、コンバージョン数またはコンバージョン値が最大化されるようにクリック単価が自動調整される入札戦略のことを指します。
具体的には、コンバージョンに繋がる可能性が高い場合は手動で設定した入札単価が引き上げられます。一方で、コンバージョンの可能性が低い場合は設定した入札単価が引き下げられます。

拡張クリック単価は個別クリック単価と自動入札を組み合わせたような入札戦略なので、ある程度自己管理のもと入札調整しつつも、自動入札のような柔軟性を持たせることが出来る、という特徴があります。

前述しましたが、個別クリック単価では入札価格の上限が設定通りに機能する反面、日々変化する環境に合わせて入札をこまめに調整する必要があるため、入札調整にまとまった手間と時間が必要です。拡張クリック単価を使えば、必要なタイミングで適切な入札調整が行われるので、個別クリック単価よりも時間と手間は削減できます。

そのため、自動入札と手動入札のいいとこ取りをしている「拡張クリック単価」はバランスが取れていて有用だと考えています。

ただし、完全な自動入札ではないので、自己管理となる要素が大きいため、自動入札と比べると手間と時間がかかる上、運用に対するある程度の知見とスキルが必要ということになります。

以降は手動入札という言葉は「拡張クリック単価」を前提としているものとして、解説させていただきます。

3. 手動入札のメリット・デメリット

手動入札のメリットとデメリットを整理してみました。

【メリット】
・運用者の知見を生かした詳細な入札コントロールができる。
・指名キーワードなど明らかに獲得効率の高いと分かっているキーワードに対して個別で入札設定ができる。
・多くの競合他社が自動入札を導入している場合、検索マーケットがGoogleの機械学習に頼った運用に偏るため、運用者のスキルによっては他社を出し抜くことが期待できる。

【デメリット】
・入札を調整するために時間と手間がかかる。
・運用者に知見やスキルがないと獲得に結びつかないユーザーにばかり配信されてしまうおそれがある。

といったものになります。

Google社の公式の見解になりますが、現在では自動入札が推奨となっており、手動入札は非推奨となっています。広告管理画面の設定でも自動入札がデフォルトとなっており、多くの広告主が自動入札での運用に切り替えていることを物語っています。

しかしながら、メリットの3つ目にも記載しましたが、検索マーケットが自動入札ばかりになった場合、特定のキーワードに入札が集中することが想定されます。

自動入札ばかりの競争となった現在だからこそ差別化を図るという意味でも、確かな知見とスキルと身に付けて手動入札で戦うというのは、選択肢の一つとして持っておくべきではないでしょうか。

4. 手動入札の導入すべきケース

それでは具体的にどのようなケースで手動入札を導入するべきでしょうか?

①自らの知見を最大限に活かした運用を行いたい時
②CVを目的とした広告の初期段階で、CVデータが十分に蓄積されていない時
③「クリック数の最大化」を選択しているにもかかわらず、クリック数が伸びない時
④獲得単価や広告費用対効果が高いと分かっているキーワードで上位表示を狙いたい時
⑤予算に関する厳密なガイドラインに従って特定のキーワードに使う金額をコントロールしたい時

主に上記5つのケースが考えられます。

①自らの知見を最大限に活かした運用を行いたい時

自動入札は一度的外れな方に学習が働くとリカバリーするのに時間を要することも珍しくありません。そういった意味では、運用者が十分なスキルと知見を有している場合、手動入札を選択した方が広告の成果が安定しやすい傾向にあります。

②CVを目的とした広告の初期段階で、CVデータが十分に蓄積されていない時

CVを目的とした広告の場合の自動入札はある程度データが蓄積されていなければ機械学習が適切に動作しないと考えられます。諸説がありますが、3週間程度の学習期間に20~30件程度のCVデータが必要とされています。

③「クリック数の最大化」を選択しているにもかかわらず、クリック数が伸びない時

「クリック数の最大化」の自動入札は、サイトのアクセス数の最大化を目指したい時や、運用初期のデータを蓄積するフェーズにおいて良く使われる入札戦略です。しかし、クリック単価の高いサービスや商材の場合はクリック数が全く伸びないことがあります。

Google広告サポートデスクの担当者の方から伺った話になりますが、
「クリック数の最大化」は低い入札単価から金額を徐々に引き上げていき最適なポイントを探りに行く形となっているようです。したがって、クリック単価が高い商材の場合、クリック数を稼げるようになるまで長い時間を要することになります。

「クリック数の最大化」を選択しているにも関わらずクリック数が伸びない場合は、一度手動入札に切り替え、かなり高めの入札単価を設定して様子をみると良いでしょう。

④獲得単価や広告費用対効果が高いとわかっているキーワードで上位表示を狙いたい時

広告を長期間運用することで、成果の期待値の高いキーワードとそうでないキーワードの傾向を掴むことができます。このような特定のキーワードで確実な上位表示を狙いたい場合、手動入札を選択したほうが良好な結果が期待できます。

⑤予算に関する厳密なガイドラインに従い、特定のキーワードに使う金額をコントロールしたい時

広告主が大手企業の場合はガイドラインに従った運用を求められるケースがあります。特定のキーワードに対して使える金額が決まっている場合は、手動入札でこまめな調整が必須となります。

以上5つのケースについてご紹介しました。
それでは次に手動入札を導入する上で知っておくべき用語について解説します。

5.手動入札にする上で知っておくべき用語

手動入札を行う上で「上限クリック単価」という言葉を理解しておく必要があります。

《上限クリック単価》
検索広告はクリック課金制となっているので「1クリックあたりいくらまで払うか」を事前に決めることができるようになっています。この、広告 1 回のクリックに対して支払い可能な上限額として設定する入札単価のことを「上限クリック単価」と言います。上限クリック単価は「広告グループ単位」「キーワード単位」で設定することができるようになっています。また、一般的には入札単価が高いほどページ上での広告の掲載順位が高くなります。

上限クリック単価を設定することで、1クリックあたりの費用を決めることができます。しかしながら、例外として以下のようなケースは設定した上限クリック単価を超えることがありますので、頭の片隅で知っておくと良いかと思います。

・拡張クリック単価を選択している時

理由は前述の通りで、コンバージョンに繋がる可能性が高い場合に設定した入札単価が引き上げられます。

・検索パートナーでの掲載の時

検索広告でディスプレイネットワークへの配信を行った場合に、そのディスプレイネットワーク上では異なるクリック単価が設定されることがあります。この単価調整は、広告の表示につながったキーワードやサイトのテーマ、広告が配信されたウェブページやアプリの種類など、さまざまな要素が考慮して決定されるようです。詳細はこちらをご覧ください。

・入札単価調整を使用している時

「地域」「広告のスケジュール」「デバイス」「オーディエンス」「プレースメント」といった項目に応じて入札の強弱をつける機能です。詳細はこちらをご覧ください。

それでは次に、具体的な手動入札における入札調整の方法について解説します。

6.具体的な入札調整のやり方

入札調整の具体的な方法を解説する前に、入札調整の鉄則をお伝えします。

それが「悪いところを切って、良いところに寄せる」という考え方です。言い換えると、CVの取れるキーワードの入札を厚めにして、そうでないキーワードの入札を薄くする、ということになります。

検索広告では結果が全て数字で表れます。そのデータを元にして、結果の出ているところに予算を振り向けて、そうでないところには予算を割かない、という判断を繰り返していくことができれば、自ずとパフォーマンスは改善していくはずです。

この「悪いところを切って、良いところに寄せる」という鉄則を念頭に入れて、以下の解説を読み進めていってください。

入札調整のやり方は「広告開始前」と「広告開始後」の2つに分けて解説します。

【広告開始前の入札調整】

CVを目的としている広告の場合、キーワードの掛け合わせによってCVの期待値が異なるため、その期待値をあらかじめ予想し期待値の高いキーワード群の入札を強めておくことで、ロケットスタートを切ることができます。例を交えて解説します。

《例》梅田にある比較的低価格な美容室が集客用に広告を配信
①「美容室」
②「美容室 梅田」
③「美容室 安い」
という3つの登録キーワードを設定しているケースを想定します。

この時、獲得が期待できそうなキーワードを順番にならべると
「美容室 梅田」⇒「美容室 安い」⇒「美容室」
という感じになることは想像に難くないと思います。

「美容室」の単体キーワードは美容室に関わる様々な情報を検索している可能性があり、
梅田の美容室を探しているとは限りません。

「美容室 安い」のキーワードは料金の安い美容室を探していることは明白なので、「美容室」単体のキーワードよりは獲得が期待できますが、地域が梅田とは限りません。

「美容室 梅田」のキーワードは梅田の美容室を探していることは明白なので、CVの期待値は上記の2つよりも高くなります。

次に1クリックあたりの単価をキーワードプランナーで算出します。
「美容室」の単体キーワードの入札価格は5月1日時点では、
「低額帯:78円」「高額帯:112円」となっています。



このデータはあくまで目安になりますが、予算が限られている場合は低価格帯よりも少し低めの水準で設定すれば良いかと思います。

したがって、今回のケースでは以下のような形で入札調整を行います。
①「美容室」→上限クリック単価:70円
②「美容室 安い」→上限クリック単価:100円
③「美容室 梅田」→上限クリック単価:130円

最もCV期待値の高いキーワード③で検索されたときに上位表示されるようにするために、最も高い上限クリック単価を設定しています。強弱の付け方ですが、目安としては一番低い上限クリック単価の1.8倍~2倍くらいの幅に収まるように調整すると良いかと思います。

また、今回は30円の幅を持たせていますが、管理しやすいようにするために一定の幅を持たせると良いでしょう。

今回は単純でわかりやすいケースを題材にしていますが、他の商材でも掛け合わせの語数や種類によって獲得の期待値は変動します。自社の商材に合わせて判断していただければと思います。

【広告開始後の入札調整】

広告配信が開始された後に関しては、基本的には以下の3点を踏まえて調整すると良いかと思います。

1.CPAの低いキーワードの入札を促進
2.CPAの高いキーワードの入札を抑制
3.CPA0円(CV数0件)のキーワードの入札を抑制

例を交えて解説します。

(例)目標CPAが1,500円のときキーワード別のパフォーマンスは以下の通りでした。

目標CPAに達しているキーワードは「キーワードC」で、その次にパフォーマンスが良い「キーワードA」、獲得に至っていない「キーワードB」があります。

■1.CPAの低いキーワードの入札を促進する■

まず「キーワードC」のCPAは目標に対して25%ほど低い水準です。したがって、CVRが変わらないと仮定するとCPCが37.5円になったとしても、まだ目標CPAを達成できることになります。これは言い換えると、入札単価の上げ余地はCPAの余力の分だけ残されているということになります。

今回のケースであれば、CVのよく取れるキーワードCの入札価格を37円まで引き上げることで、高い費用対効果でCVの積み増しを狙えます。

■2.CPAの高いキーワードの入札を抑制する■

次に「キーワードA」のCPAは目標に対して34%ほど高い水準です。したがって、CVRが変わらないと仮定するとCPCが22.5円になれば目標CPAに達成することができる、ということになります。

今回のケースでは、入札価格を22円まで引き下げることで、目標のCPAの達成を目指せるというわけです。

■3. CPA0円(CV数0件)のキーワードの入札を抑制する■

次に「キーワードB」についてですが、キーワードが取れていないため現在の入札価格が適性水準かどうか判断することが難しい状態です。

ですが、現時点でCVが取れていないだけで、このなかにお宝キーワード(CVがよく取れるキーワード)が埋まっている可能性も十分に考えられます。さらに、キーワードを抑制し続けると運用が窮屈になり、ボリュームを出せなくなってしまいます。

したがって、まずは目標CPAの倍くらいまでは同一のクリック単価で配信を続けてみると良いかと思います。万が一、それでも獲得ができない場合には入札単価の引き下げを検討しましょう。

この水準を見極めるのはある程度経験が求められますが、目安としては前述の「キーワードA」の水準よりも少し低いくらいに設定する、という感覚で良いかと思います。

以上、入札調整の基本的な考え方の3類型について説明しました。

実際の運用ではCVの取れないキーワードの方が多くなるため、「2.CPAの高いキーワードの入札を抑制する」「3.CPA0円(CV数0件)のキーワードの入札を抑制する」に従って入札を下げすぎてしまうと、配信ボリュームが少なくなりすぎてしまうことがあります。そのため、最初の数カ月間は「1.CPAの低いキーワードの入札を促進する」に従って、CPAの良いものだけ積極的に入札価格を上げて様子を見ると良いかと思います。

基本的には、「悪いところを切って、良いところに寄せる」「CVのとれるキーワードの入札を厚めにして、そうでないキーワードの入札を薄くする」という大原則に則って調整を行えば問題なく、考え方は非常にシンプルです。

7.まとめ

手動入札についてポイントを徹底的に解説させていただきました!自動入札が一般化し始めている今だからこそ、手動入札を使いこなすスキルや知見が貴重になっていくと考えています。

今回のブログを参考に自社の運用に活かしていってください。

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北澤陽介

都市銀行での営業、社会保険労務士法人での中小企業のコンサルティングの経験を経てSTAR株式会社に入社。現在は年間約1億円規模のGoogle・Yahooリスティング広告やMeta広告などSNS広告の運用に携わる傍ら、WEB広告のインハウス化支援サービスの事業責任者も務める。

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