Google広告のP-MAXキャンペーンについて、正しく理解できていますか？
Web広告はAIも活発になりどんどん進化しています。P-MAXも、もちろん進化しています。
「どんなものかよくわからない」
「細かく調整できないのでは？」
もし、まだそう思っているならもったいないです。たしかに、登場したばかりの頃のP-MAXは、調整できる部分が少なくとっつきにくい部分もありました。ですが、今のP-MAXは徐々にですが調整したり分析したりできる部分が増えてきています。
この記事では、そんなP-MAXの「今」と具体的な付き合い方をお伝えしていきたいと思います。
目次
1. P-MAXについておさらい
1.1 P-MAXとは…その強みと、押さえるべきポイント
まずはP-MAXをについて軽く解説します。基本的な内容を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
P-MAXは、たった一つのキャンペーンで、Googleのあらゆる広告チャネル（YouTube、検索、Discoverなど）に広告を配信できる、コンバージョン獲得に特化したキャンペーンです。
1.1.a P-MAXの3つの強み
P-MAXの主な強みは3つです。
・広範囲かつ効率的にリーチ：Googleの全広告チャネルにアプローチできるため、今まで届かなかったお客様候補にもリーチが可能です。
・成果への最適化：AIが「コンバージョン（購入や問い合わせなどの成果）を最大化する」という一つの目的に向かって、配信を自動で調整してくれます。
・最適な広告をユーザーに配信：登録したテキストや画像、動画といった広告素材をAIがテストし、最も効果の高い「勝ちパターン」の組み合わせを自動で作り、ユーザーに届けます。
1.1.b 注意するべき2つのポイント
ただ、記載したような万能なメニューではありません。導入する上で知っておかないといけないところがあります。
・細かい手動調整は不可：従来の検索広告やディスプレイ広告のように、キーワードやオーディエンスの単価を細かく調整する、といったような運用はできません。
・学習時間が必要：ターゲットではないユーザーに最初は出ることもあり、始めてすぐに成果が出ることは稀です。学習し、最適化されるためには時間とデータが必要です。
P-MAXについてお問い合わせいただくことが多いですが、実は導入に関しては慎重にすべきメニューです。上記のことから、最初は結果的に成果が悪化することもあるので、それを踏まえて導入する必要があります。
しかし、それも今のP-MAXでは調整できる部分が増えて事前に対策しやすくなっているため、昔よりは扱いやすくなりました。
2. P-MAXを最大限活用するための主な機能 8選
では、ここからP-MAXを運用する上で、そして、効果をあげるために押さえておきたい機能について詳しく解説していきます。
2.1 元々あった、見落としがちの機能
まずは、以前からあった機能で、P-MAXに活かせるものを見ていきたいと思います。
2.1.a 「顧客の獲得」の設定
この機能は以前から実装されており、ほかのキャンペーンでも使用できます。キャンペーン設定の画面から確認することができます。
デフォルトでは新規顧客と既存顧客に対するキャンペーンの入札単価は均等に設定されていますが、ここを調整することで新規顧客や休眠顧客に対して入札の強弱を設定ことが可能です。また、新規顧客にだけ配信することも可能になっています。
これを活用するにはコンバージョン値(売上金額)の設定と十分な既存顧客の情報(コンバージョンのオーディエンスリストや顧客リスト)が必要ですが、新規顧客とリピーターのデータを管理画面上で分けて見ることもできるため、特にEC系の広告において便利な機能となっています。
2.1.b 動画作成ツール
手持ちのテキストや画像から、簡単な操作で動画を作成できます。
このツール自体は以前からありましたが、YouTubeに配信できるP-MAXの登場でその重要性が一気に高まりました。動画があるかないかで、成果が大きく変わることがあるのと、広告の評価もあがります。
今は動画制作ツールはたくさん出ていますが、テンプレートがあるため比較的簡単かつ直感的に作成できます。どれも苦手だなと感じた方は使ってみてもいいかもしれません。
2.2 P-MAXをコントロールするための機能
次に、P-MAXのアップデートにより使えるようになった機能や、今まで調整できなかったのに調整できるようになった機能を紹介していきます。
おさらいも含めて、元からあった機能も一部紹介します。
2.2.a 検索語句の確認と除外
この機能はP-MAXの中でも誰もが実装を待ち望んでいたものかと思います。
「分析情報」タブからユーザーが検索した語句をみることができますが、P-MAXが導入された当初は検索広告と同じように見ることはできませんでした。今では検索語句と同じように確認することができるので、どんな検索の傾向を持つ人に広告が届いているのか分析できるようになっています。
また、検索語句の除外もアカウント単位でしかできず、ほかのキャンペーンに影響を及ぼすため不便なところがありましたが、今ではキャンペーンごとに設定することが可能になりました。
2.2.b プレースメントの確認と（アカウント単位での）除外
あなたの広告が「どこに」表示されたかを確認できる機能です。プレースメントレポートを見れば、広告が表示されたサイトやYouTubeチャンネルのリストやアプリ、そして、その「表示回数」が分かります。
クリック数までは分かりませんが、「ブランドのイメージに合わないサイトにたくさん出ていないか？」とチェックする上でとても重要です。もし不適切な場所を見つけたら、「アカウント単位」ですが除外設定をすることができます。
2.2.c チャンネルのパフォーマンス
これは最近実装された機能ですが、プレースメントの確認とあわせて押さえておきたいかなり重要な機能です。
繰り返しになりますが、Googleのあらゆる広告チャネルを横断して配信するのがP-MAXです。しかし、つい最近まで、そのチャネルのどこにどれくらいでているのか確認することはできませんでした。
今では検索やGoogleMAP、ディスプレイ枠やYouTubeにどれだけ出ているか確認することができるようになっています。ディスプレイやYouTubeの効果が悪いなと思ったら、先ほどのレポートでプレースメントを確認したり、検索が悪いなと思ったら検索語句を確認するなど、何がどのような影響を及ぼしているのか分析・予測がしやすくなりました。
2.2.d 検索テーマ
AIに対して「このテーマで探している人はコンバージョンしやすい」「こういうキーワードで探している人に広告を当てたい」と、こちらからヒントを与えられる機能です。
P-MAXがローンチしてからしばらくして実装された機能ですが、当初25個だったのに対して今では最大50個まで登録できます。
AIの学習をスピードアップさせたり、自分たちだけが知っている専門的なキーワードをこっそり教えたりする際に効果的です。
2.2.e ブランド除外
指定したブランドや商品名で検索されたときに、広告をが表示されないようにする機能です。自社ブランド名での「指名検索」にP-MAXが反応して、他の検索キャンペーンと広告費を取り合ってしまうことや、既存顧客ばかりに配信される状況を防ぐ機能です。
競合名ももちろん除外することができます。競合名での成果が悪いなと思ったときは登録しておきましょう。
今までは検索語句を確認してブランド名を除外していましたが、この機能を使うと誤字や表記ゆれなどにも対応できるので便利です。
2.2.f ページフィード
これは動的検索広告でも使用されていた機能で、AIが遷移先をユーザーの検索語句などに合わせて変更する際、サイト全体ではなく作成したリストの中から指定させることができるようになる機能です。
例えば、「実施中のキャンペーンのページにだけユーザーを誘導したい」といった場合に役立ちます。
2.3 P-MAXをはじめたら、ここをチェック！
たくさんの機能を紹介しましたが、運用するにあたって押さえておきたい具体的なアクションをまとめました。
・定期的に「検索語句」をのぞいて、ズレた検索カテゴリがあれば「検索テーマ」や「除外キーワード」で軌道修正。
・時々「プレースメント」や「広告チャネル」も確認。
・アセットの詳細画面で、パフォーマンス評価の低い画像やテキストは、新しいものと入れ替えてあげる。
機能を活用してP-MAXを最適化していきましょう。
3. P-MAXの役割 Googleが提唱する「Power Pack」とは
ここまでの機能解説で、P-MAXに関してある程度運用や性能のイメージはできたと思います。しかし、Googleのすべてに配信できるP-MAXを使いこなせばそれで終わりというわけではありません。P-MAXの役割は何なのか意識して使うことで、更にGoogle広告の効果を引き出すことが可能です。
Googleが戦略として提唱する「Power Pack（パワーパック）」と、そこからみるP-MAXの役割を考えていきましょう。
3.1 複雑化するユーザーのアクションと「Power Pack」の概要
例えばユーザーが商品を買うまでの道のりは、今やわかりやすい決められたルートではなく、ひとりひとり全く異なる複雑なものになっています。探し方も、キーワードや画像だけではなく、AIも知れわたって利用されるようになり本当に様々なものとなっています。
そんな時代の流れとユーザーの変化に合わせて、広告も進化する必要があり、Googleが提唱したのが「Power Pack」です。これは、「検索広告」「P-MAX」「デマンドジェネレーション」という3つのキャンペーンをチームとして連携させる戦略です。
3.2 AIによる「横断的な学習」
「Power Pack」の一番押さえておきたいところは、単に3つのキャンペーンを同時に使う、ということではありません。
これらを「同じ広告アカウント」で「同じゴール」に向かって動かすことで、GoogleのAIがキャンペーンの垣根を越えて、ユーザーの情報を共有し、どんどん学習していく点にあります。
例えば、デマンドジェネレーションであなたの商品を初めて知った人が、P-MAXで興味を深め、最後に検索広告で名前を検索して買う、といった複雑な道のり全体を、AIが「切れ目のない一つの流れ」として捉え、ユーザーに届くよう最適なサポートをしてくれるようになります。
3.3 この戦略における「P-MAX」の3つの特別な役割
では、この「Power Pack」の中で、この記事の主役であるP-MAXはどんな役割を担うのでしょうか。その独自のポジションを3つのポイントで解説します。
3.3.a 全チャネルを網羅し、連携の”要”となる
P-MAXは、「Power Pack」を構成するキャンペーンの中で、最も広範な配信面をカバーします。検索、YouTube、Discoverなど、あらゆる場所に顔を出せるのはP-MAXだけです。
この圧倒的なカバー範囲で、検索広告やデマンドジェネレーションがそれぞれ専門領域で捉えきれないお客様との接点を埋め、チーム全体の連携をスムーズにする「要（かなめ）」の役割を果たします。
3.3.b キーワードの壁を超える「需要発掘エンジン」
P-MAXの真価が発揮される役割が、この「需要の発掘」です。
従来の検索広告は、任意で設定したキーワードの範囲でしか広告を出せませんでした。しかし、P-MAXは「お客様の実際の行動」に合わせた配信を見込めるので、私たちの思い込みや想定を超えた、チャンスを発見してくれる可能性があります。
P-MAXは、自分たちがまだ気づいていない、お客様の隠れたニーズを見つけ出してくれる、強力な「需要発掘エンジン」なのです。
3.3.c 「コンバージョン」を起点に全顧客層へアプローチする
P-MAXは、デマンドジェネレーションと同じように、まだ買う気になっていないお客様にもアプローチしますが、その動き方には少し特徴があります。
デマンドジェネレーションが「検索する前」のお客様にアプローチして、興味の”種まき”をするのを得意とするのに対し、P-MAXの動きは、あくまで「コンバージョン」という最終ゴールが起点です。
つまり、まだ買う気がなさそうに見えるお客様でも、「最終的にコンバージョンに至る可能性が高い」とAIが判断すれば、検索行動などの情報もヒントにしながら、しっかりアプローチします。これがP-MAXの面白い立ち位置です。
3.4 私たちはP-MAXをどう使いこなすべきか
この戦略的な視点を持つと、P-MAXとの付き合い方がわかってくると思います。
P-MAXとは、AIに全てを丸投げする“なんでも便利ツール”ではありません。「Power Pack」という枠組みの中で、検索広告やデマンドジェネレーションと連携し、ビジネス全体の成長を引っ張っていく“中心選手”となるキャンペーンです。
前項で解説した「ブランド除外」や「チャンネルのパフォーマンス」といった機能は、P-MAXをこのチームの一員として正しく機能させるためになくてはならないものです。P-MAXを単独で運用するのではなく、ほかのキャンペーンと一緒に成果を出す意識をしていくこと。それこそが、P-MAXを本当に使いこなすための鍵となります。
4. AIとつきあうということ
P-MAX、そしてGoogleのAI、そのほかのAIも日々ものすごいスピードで進化しています。
それは、私たちの仕事を奪うものではなく、むしろ、大変な作業をAIに任せて、私たち人間はもっと本質的な戦略を考えたり、サービスや商品の改良につとめたり、本当に大切な仕事に集中できるようにしたほうがいいのではないでしょうか。
そして、AIは我々だけではなくユーザーの動きにも変化を与えています。それも意識した戦略が必要になります。
その1つの戦略としてGoogle広告を選択するなら、P-MAXは避けては通れなくなるでしょう。この記事が、これからその選択をした人に役立てば何よりです。
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